Windows で Clash Verge Rev を使う:インストール・サービスモード・TUN 設定まとめ
Clash Verge Rev を例に、Windows でのインストール先選び、システムプロキシとサービスモードの有効化、TUN 仮想アダプタ設定、さらにファイアウォールのブロックやポート競合といった定番トラブルの調べ方までまとめて解説します。
Windows で Clash Verge Rev を選ぶ理由
Windows で Clash 系ルールセットを動かせるクライアントは複数ありますが、Clash Verge Rev は更新頻度が安定していて、画面の情報量もほどよくまとまっている点が特徴です。UI 部分は Tauri フレームワークで構築されており、コア(内核)には mihomo(コミュニティでは Clash Meta とも呼ばれます)を採用。ルール構文やプロキシグループの仕組みは本家 Clash と互換性を保ちつつ、旧来の Clash に不足していた TUN モード、スクリプト拡張、サブスクリプション自動更新などの機能を補っています。コマンドラインでコアを直接動かす場合と比べ、GUI ならプロキシグループの切り替え、ログ確認、接続履歴の確認がすべてクリック操作で完結するため、設定ファイルの文法に不慣れな人にも扱いやすくなっています。
本記事では実際のインストール順に沿って手順を紹介し、初心者が特に詰まりやすいポイントを重点的に示します。インストール先の選び方、システムプロキシとサービスモードがそれぞれ何を解決するのか、TUN モードが「オンにしても効かない」と言われがちな理由、そしてネットに繋がらなくなったときに最初に確認すべき点についてまとめます。
インストール前の準備:インストーラーとインストール先
インストーラーをダウンロードする際は、配布形式が2種類あることに注意してください。1つは setup や x64-setup と付いたインストール版で、ダブルクリックすると標準的なインストール処理が走りレジストリに情報が書き込まれます。もう1つは portable(ポータブル版)で、解凍するだけで使え、システムに書き込みを行いません。インストール履歴を残したくない場合や複数台のPCに持ち運びたい場合に向いています。コアや機能自体はどちらも同一で、違いはインストール方式だけです。
- 日本語や特殊文字を含むパスは避ける:インストール先やユーザー名に日本語、スペース、感嘆符などの記号が含まれていると、一部バージョンのコアのサブプロセスが設定パスの読み込みで解析エラーを起こすことがあります。
C:\Program Files\Clash Vergeのような、半角英数字のみのパスにインストールすることをおすすめします。 - クラウド同期フォルダは避ける:インストール先や設定フォルダを OneDrive や Synology Drive などのクラウド同期フォルダ内に置かないでください。同期プロセスが定期的にサブスクリプションのキャッシュファイルをロックし、クライアントが設定を読み書きする際にエラーや画面フリーズを引き起こします。
- OS バージョンを確認する:TUN モードが依存する Wintun 仮想アダプタドライバーは Windows 10 バージョン 1809 以降が必須です。古い Windows 10 の場合は事前に Windows Update を実行しておくことをおすすめします。そうでないとドライバーのインストール工程が静かに失敗してしまいます。
初回起動時:システムプロキシとサービスモードの役割の違い
インストール完了後にクライアントを開くと、トップ画面に一見似ているけれど役割が全く異なるスイッチが2つ表示されます。それぞれの境界を理解しておくと、後々のトラブル調査にかかる時間を大幅に減らせます。
システムプロキシのスイッチ
このスイッチの役割はシンプルです。Windows のシステムレベルのプロキシ設定を、ローカルの混合ポート(デフォルトでは 127.0.0.1:7897 のようなアドレスをリッスン)に向け、ブラウザや大半のデスクトップソフトをこのプロキシ経由で通信させます。実際に変更しているのは Windows の「設定 → ネットワークとインターネット → プロキシ」の項目で、手動でプロキシアドレスを入力するのと原理的には同じことをクライアントが自動でやってくれているだけです。オンにすればブラウザはプロキシ経由で通信できますが、すべてのプロセスがシステムプロキシ設定に従うとは限りません。CLI ツールや一部のゲーム、バックグラウンドで動くサービスプロセスはこの設定を無視して直接通信することが多く、「プロキシはオンなのに特定のソフトだけ繋がらない」という現象の原因になります。
サービスモード(Service Mode)
サービスモードが解決するのは権限の問題です。TUN モードは仮想アダプタの作成や本機のルーティングテーブルの変更を伴い、これらの操作は Windows 上では管理者権限が必須です。TUN のオン・オフのたびに毎回クライアントを「管理者として実行」するのは非常に面倒なので、Clash Verge Rev はオプションのバックグラウンド Windows サービスを提供しています。一度インストール(この際に一度だけ管理者権限の確認が必要)しておけば、以降クライアント自体は通常ユーザー権限で動作し、昇格が必要な操作はこのサービスを経由して実行されるため、毎回の権限ダイアログが不要になります。
TUN モードの設定:仮想アダプタとルーティングのハイジャック
TUN モードの仕組みは、システム内に仮想アダプタ(Windows では Wintun ドライバーに依存)を作成し、クライアントがデフォルトルートをその仮想アダプタに向けることで、ルーティングテーブルで除外されていない IP レベルのトラフィックすべてがまずここを経由し、その後コアがルールに基づいて振り分けを行う、という流れです。特定のプロセスが自発的にプロキシ設定を読み込む必要がなくなるため、システムプロキシモードで発生していた「一部のプログラムがプロキシをバイパスしてしまう」問題を解決できます。ゲーム、UDP アプリ、ブラウザ以外のクライアントすべてをプロキシ経由にしたい場合に特に有効です。
設定パネルで TUN モードを有効にする際は、通常いくつかのオプションに注意が必要です。
- スタックモード(Stack):System スタックはシステムのネットワークスタックを直接呼び出すため性能は高いものの、一部のドライバーとの互換性に敏感です。gVisor はユーザー空間で実装されたネットワークスタックで、互換性は安定していますがスループットはやや低めです。初回設定でうまく繋がらない場合は、まず gVisor に切り替えてドライバー競合を除外し、動作を確認したうえで System スタックを試すのがおすすめです。
- DNS ハイジャック:TUN モードは通常 DNS クエリも同時に引き受け、解決要求も振り分けロジックに組み込みます。これが原因で、一部のローカルネットワークサービスが TUN 有効時にむしろアクセスできなくなることがあります。ローカルの DNS が Fake-IP に置き換えられてしまうためで、設定でイントラネットのドメインや LAN セグメントを直接接続の除外リストに追加する必要があります。
- 厳格なルーティング:一部バージョンには「厳格なルーティング」というオプションがあり、すべての送信トラフィックをハイジャックするか、デフォルトルート以外の補完的なトラフィックのみをハイジャックするかを決めます。意味がよく分からない場合はデフォルト値のままにしておき、内容を推測しながら高度な設定を勝手にオンにしないようにしましょう。
TUN を有効にした後にまったくネットに繋がらなくなった場合は、次の順番で確認してください。
1. サービスモードがインストールされ、状態が「実行中」になっているか確認する
2. タスクマネージャーを開き、仮想アダプタ(名前に Wintun を含む)が作成されているか確認する
3. TUN をオフにし、システムプロキシだけで正常に通信できるか単独でテストする
4. システムプロキシは正常だが TUN が異常な場合、スタックモードを gVisor に切り替えて再度試す
よくあるトラブル対応:ファイアウォールのブロックとポート競合
Windows Defender ファイアウォールによるブロック
TUN モードを初めて有効化したとき、あるいはクライアントを初めて起動したときには、Windows から「Windows Defender ファイアウォールでこのアプリの機能の一部がブロックされています」というポップアップが表示され、通信を許可するネットワークの種類を選ぶよう求められることがよくあります。ここでは「プライベートネットワーク」と「パブリックネットワーク」の両方にチェックを入れて許可することをおすすめします。そうしないと仮想アダプタが作成された後もファイアウォールにトラフィックをブロックされ続け、画面上は接続済み・プロキシグループの速度テストも正常なのに、実際には Web ページが開けないという状態になります。誤って「キャンセル」を押してしまった場合は、「コントロールパネル → システムとセキュリティ → Windows Defender ファイアウォール → アプリまたは機能をファイアウォール経由で許可する」から手動でクライアントを探してチェックを入れ直せます。
企業の業務用 PC やサードパーティ製セキュリティソフトが入っている端末では、もう一段注意が必要です。一部のエンドポイント管理ソフトは仮想アダプタドライバーの読み込みまで追加でブロックすることがあり、Wintun ドライバーのインストール手順が何度も失敗する現象として現れます。この場合は通常、社内 IT 部門に連絡してホワイトリストに追加してもらう必要があり、クライアント側でこの種のポリシー制限を回避することはできません。
ポート競合・ポート使用中の問題
Clash Verge Rev はデフォルトで混合ポートや HTTP ポートなど複数のポートをリッスンします。すでに別のプログラムが同じポートを使用している場合(複数のプロキシツールを同時に入れていたり、前回のクライアントプロセスが完全に終了していなかったりする場合によく見られます)、起動時にポートのバインドに失敗する、あるいは表面上は正常でもプロキシが効かないという症状が出ます。まずはポートが使用中かどうかを確認しましょう。
netstat -ano | findstr 7897
コマンド出力の最後の列がそのポートを使用しているプロセスの PID です。タスクマネージャーの「詳細」タブで PID から該当プロセスを特定し、残っている古いプロセスなのか、それとも競合するソフトなのかを確認しましょう。残留プロセスであればそのまま終了すれば問題なく、クライアントの設定でポート番号を競合しない値に変更して再起動する方法でも対応できます。
日常使用時のちょっとしたコツ
設定がうまく通ったあとの日常的なメンテナンスは、主にサブスクリプションの更新とルールの微調整が中心になります。サブスクリプションリンクは自動更新の周期を設定しておくと、ノードリストが期限切れになって無効なアドレスに繋ぎ続ける事態を避けられます。ルールセット(GeoIP/GeoSite)にも専用の更新項目があり、サブスクリプション更新とは別物です。長期間更新しないと振り分け判定の精度が落ちていきます。プロキシグループのノードを切り替えたあとは、接続パネルで遅延テストが一巡完了していることを確認しましょう。テストが済んでいないノードを無闇に選ぶと、実際には使えない出口に繋がってしまうことがあります。
今後複数のデバイス間で同じ振り分けロジックを維持したい場合は、設定ファイルとサブスクリプションリンクを別途バックアップしておくと、OS の再インストールやデバイスの入れ替え時にそのままインポートするだけで済み、上記の設定をすべて一からやり直す必要がなくなります。